目 的 |
自然の植生が急速に失われている都市近郊において,住環境やその周りの
「緑」は重要であると考えられる.
このような都市部の「緑」といえば,公園,寺・神社,街路樹などの
公共のものがあげられるが,個人の住宅庭園も重要な位置占めている.
それは量的な面ばかりでなく,
庭などの身近な自然環境でも人間にとって「精神的回復・癒し」の効果がある
(Kaplan, 1997など)からでもある.さらに,個人の庭は生活に密着し,
能動的に改変できる個人の表現の場と
して,場所アイデンティティ(Proshansky et al, 1983)
の対象としての機能と意味を持っている.
また,庭の利用形態や景観に対する嗜好は,経験や文化の影響を受けている
と考えられる.
このように個人の庭は,気候・風土・文化・個人の嗜好などの変数が複雑
に絡まりあった出力として捉えられ,その景観も多様であると考えられる.
このような複雑な様相を占める個人の庭
に関して数量的な研究を行うのは大変興味深いが,それには統計的な標本抽出調査が
必要である.そうすることによりはじめて集団特性(collective characteristics)としての
国民性(林, 2000)が捉えられる.
日本の都市近郊住宅庭園の利用形態や景観は,欧米先進国の都市近郊住宅庭園の実情
と比較することにより,よりその全貌が明らかになると考えられる.
欧州における造園の歴史的伝統として,英国(英国式造園様式:自然型),
フランス(大陸式造園様式:加工型),スペイン(庶民的造園様式)
などがある.このような伝統が西欧の個人の庭にどのように影響を与えているかを
現地調査で明らかにし,それが,日本にどのように移入しているかを観察していくこと
は,都市近郊住宅庭園の今後を占う意味でも大変興味深い.
なお,本研究は平成12年度〜14年度文部科学省科学研究費補助金 (基盤研究(B)(2)),課題番号12480062「園芸植物の嗜好と景観形成の統計学的研究」 (研究代表 大森宏)の補助を受けて行われた.
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