景観刺激

景観刺激としての写真の利用

 訪問調査を行った個人住宅庭園では,一軒あたり30枚程度の屋外 景観写真を撮影した.この中で,その庭の全体像や雰囲気を最もよく表現している と思われる写真を1枚選び,対象家屋の庭景観の代表とした. これを,はがき大の大きさであるKGサイズ (102mm×136mm)の写真(デジタルプリント)にして被験者に提示して,その印象を 計測する心理学的実験を行った.
 しかし,別の写真を代表とすれば異なる印象をもたらすことは十分に想定される. この意味で,印象の計測は庭景観に対するものというよりは, 庭景観のある特定の断面を切り取った写真に対してのみ行っているにすぎない, という批判はいつまでも残るといえる.このため,代表とされた景観を別のアングル から撮影した写真を3枚追加して,対象家屋あたり4枚の景観写真刺激にした実験 も行った.これは,特定の写真を選択することにより生じる偏りをなるべく防ぎ, 対象家屋のもつ景観をより多面的に表現するためである.
 景観刺激は,写真4枚をA5用紙に配置させ,光沢紙にインクジェット プリンターで印刷したものと,それの光沢紙へのカラーコピーで行った. デジタルプリントよりは多少画質が落ちるが,印象計測には十分な画質がえられた.

 景観研究で刺激に写真を用いた場合の効果についてじは多数の先行研究 がある.その中の多くの研究(Shuttleworth 1980, Feimer 1984, Kellomaki & Savolanien 1984, Stamps 1990 など)において, 景観の刺激として写真を使用しても実際の景観を刺激とした場合と類似の 反応が得られることが示されており,写真による景観評価の妥当性は高いと考えられる.


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Copyright (C) 2004, Hiroshi Omori. 最終更新:2004年 5月21日