陸上植物の分布を決定する主な要因は気温と降水量である。珪藻は水の中に暮らしているので、気温は陸上植物ほど影響を受けないし、降水量は関係がない。珪藻が影響を受けるのは、水質そのものである。珪藻のほとんどは、淡水か海水のどちらかにしか生育できない。また、汽水域を好んで出現する種類もある。しかし、海水より塩分濃度の高い死海やグレートソルトレイクなどで生活する種類もある。陸水ではpHも分布決定のための大きな要因である。酸性水域に出現する種類は、ほとんどがアルカリ性水域では出現できない。逆もまたありきで、アルカリ性水域に出現する種を、実験室内で酸性培地に入れると、まもなく死んでしまう。また、一口に酸性水域といっても、pHが2以下のような強い酸性水域(潟沼や草津温泉)に出現できるような種類いれば、pH5程度の弱酸性水域にのみ出現するような種類もいる。日本には強アルカリ水域はほとんど無いが、pHが10以上の水域で出現する珪藻の種もいる。貧栄養の湖から富栄養の湖まで、貧腐水の川から強腐水の川まで、また、重金属イオンを含む鉱山廃水などにまで出現する種類も珪藻にはいるのである。