2009.10.22

9-3.オッズ比(odds ratio)

  変数 A,B 間の関連の強さを測る指標としてオッズ比がある. たとえば,食中毒事件が起きたとき, 食中毒症状が出たか出なかったか(変数 A)を 出された食材を食べた人と食べなかった人(変数 B)で 分類する.このとき,ある食材に対しての分類は以下のようであったとする.

   発症あり(A1)   発症なし(A2
 食べた(B1)  a b
 食べなかった(B2)  c d

 食材を食べたときに発症する確率 Pr[A1| B1] の推定値は a/(a + b), 発症しない確率 Pr[A2| B1] の推定値は b/(a + b) である. これより,その食材を食べたとき食中毒を発症する危険率(オッズ)は,
Pr[A1| B1]/P[A2| B1] = a/b
であり,同様に食べなかったときの発症オッズは,
Pr[A1| B2]/P[A2| B2] = c/d
である.この両者の比,
odds
をオッズ比といい,ある食材を食べたことが食中毒症状発症にどれだけ危険であるかの尺度になる. 危険が同等のときは,オッズ比は 1 となる.なお,どこかのセルデータが 0 であったときは, セルのすべての値に 0.5 を加えて補正する.

 ピアソン χ2 検定は,

帰無仮説 H0:オッズ比 φ = 1
の検定と同等である.

例題:食中毒原因食材の χ2 独立性検定とオッズ比

 1940 年のNew York 州Oswego の協会の夕食会における胃腸炎異常発生の喫食 調査データによると,出された食材の喫食と食中毒症状で以下の関係があった.これより, 食中毒の原因食材を推定せよ.

食品名 発症あり 発症なし
 食べた  食べない  食べた  食べない
ケーキ 27 19 13 16
バニラアイス 43 3 11 18
チョコアイス 25 20 22 7

解答
表から食材ごとに 2 × 2 分割表つくり,そこから観測度数と期待度数との偏差を出して ピアソンの χ2 値を計算する.
ケーキの場合,χ2 = 1.37,であり,5 %有意の 3.84 より小さいので, ケーキの喫食と食中毒発症とは独立であるという帰無仮説は棄却されない.すなわち,ケーキは食中毒 の原因食材ではないと言える. オッズ比 φ = 1.75 で,ケーキの喫食の食中毒に対するリスクは少し大きい程度である.

問題
バニラアイスとチョコアイスの食中毒に対するリスクを分析せよ.

Copyright (C) 2008, Hiroshi Omori. 最終更新:2009年10月22日