2009.5.28

携帯解答サイト: http://lbm.ab.a.u-tokyo.ac.jp/~omori/k/

標準正規分布累積表の使い方
第11問:1 以上%
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  18 28  13
    
第12問:-2 以下の%
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  15 1  14
第13問:-1 から 1 の%
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  16 4  13
    
第14問:-1.96 から 1.96 の%
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  15 1  15
第15問:50 点以下の%
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  15 4  14
    
第16問:35 点以上の%
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  14 6  14
第17問:上位 5 %に入る点数
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  14 18  13
    
第18問:70点の学生の順位
内訳  解答者数  間違い   正 解  
人数  12 4  11
 
解答者数が少ないが,解答した学生は理解できているようだ.

5-5. 独立な正規分布の合成分布

平均 μ1, 分散 σ12,の正規分布 からの標本 x 〜 N( μ1,σ12 ) と, 平均 μ2, 分散 σ22,の正規分布 からの標本 y 〜 N( μ2,σ22 ) があり,両者が互いに独立であるとする.(y の値は x の値の影響を受けない.)

和の分布
xy は平均 μ1 + μ2,分散 σ12 + σ22,の正規分布に従う.
xy 〜 N( μ1 + μ2, σ12 + σ22
差の分布
xy は平均 μ1 − μ2,分散 σ12 + σ22,の正規分布に従う.
xy 〜 N( μ1 − μ2, σ12 + σ22
一般の線形結合の分布
a と b を任意の実数(スカラー)とすると,xy の線形結合 ax + by は,
ax + by 〜 N( aμ1 + bμ2, a2 σ12 + b2 σ22

例題
平均 μ 分散 σ2 の正規分布から無作為標本 (ランダムサンプル), x1x2x3, を抽出した.標本平均 x- の分布を求めよ.
解答例
x- = (x1 + x2 + x3 )/3 = (1/3)x1 + (1/3)x2 + (1/3)x3
である.これより,
標本平均 x- の平均:E[x- ] = (1/3)μ + (1/3)μ + (1/3)μ = μ
標本平均 x- の分散:Var[x- ] = (1/3)2σ2 + (1/3)2σ2 + (1/3)2σ2 = (1/3)σ2
よって,x- 〜 N(μ,σ2/3 ). 標準偏差は σ/√3.
なお,標本平均のような統計量(標本から計算して得られる値)の標準偏差を標準誤差 (SE : standard error)という.
標準誤差は,標本平均の値がどれくらい振れる可能性があるかを示す指標となる.

正規分布からの標本(サンプル)の平均値の分布
平均 μ,分散 σ2 の正規分布から大きさ n の標本を抽出
→ 標本平均 x- は平均 μ,分散 σ2/n (標準偏差 σ/√n)の正規分布に従う. x- 〜 N(μ,σ2/n ).
→ 標本の大きさ(サンプルサイズ)を大きくすれば,母集団平均 μ は標本平均 x- で 精度よく推定できる.

平均 μ = 50,分散 σ2 = 100(標準偏差 σ = 10)の正規分布から大きさ n = 20 の 標本を抽出.

  データ例 標本平均 x-
サンプル1:   46.44173, 55.98069, 60.65703, 57.35829, 29.06341, 55.92665, …   50.46604
サンプル2:   56.49328, 26.15988, 36.63778, 30.11928, 32.55220, 49.38015, …   47.40793
サンプル3:   42.89847, 45.66345, 54.59994, 34.18581, 43.40348, 51.62797 …   51.13295
…………………

 上の表のようにサンプルを多数回抽出したとすると,サンプルごとに標本平均 x- が 得られるので,標本平均の分布を考えることができる.
 標本平均の分布の平均は,μ = 50,分散は,σ2/n = 100/20 = 5(標準偏差 = √5 = 2.236)の 正規分布になる.つまり,

x- 〜 N(50, 5),
である.

例題
N(50, 100) から大きさ 20 の標本を抽出した.52.24 以上の標本平均が得られる確率は.
解答例
標本平均は,x- 〜 N(50, 5) と分布する.標準化の式より,
(値 - 平均)/標準偏差 = (52.24 - 50)/2.24 = 1
これより標準正規分布で z > 1,となる確率を求める.すなわち,
Pr[z > 1] = 1 - Pr[z < 1] = 1 - 0.841 = 0.159

例題
平均身長 172.5cm,標準偏差 6cm の集団 A と,平均身長 168cm,標準偏差 4.5cm の集団 B がある. いま,集団 A,B からそれぞれ 1 人をランダムに選んだとき,集団 A から選ばれた人の方が集団 B から 選ばれた人より背が高くなる確率を求めよ.
解答例
集団 A からの標本を x,集団 B からの標本を y とする.
x 〜 N(172.5,36),y 〜 N(168,20.25)なので, uxy 〜 N(4.5,56.25)に従う.
つまり, 集団 A からの標本と集団 B からの標本の差は,平均 4.5cm,標準偏差 √56.25=7.5cm の 正規分布に従う.この正規分布が 0 より大きくなる確率を求めればよい.
 標準正規分布に変換すると,
z = (u − μ)/σ = (0−4.5)/7.5 = -0.6
となるので,標準正規分布が -0.6 以上となる確率である.正規分布の対称性から,
Pr[ z > -0.6 ] = Pr[ z < 0.6 ] = 0.726
である.

例題
上記の 2 つの集団 A,B において,こんどは両集団からそれぞれランダムに 9 名ずつ選び,それぞれの 平均身長を計算した.集団 A から選ばれた人の平均身長の方が集団 B から 選ばれた人の平均身長より高くなる確率を求めよ.
解答例
集団 A からの標本を x1 ,…, x9, 集団 B からの標本を y1 ,…, y9,とし,それぞれの平均を x-y- とする.
xi 〜 N(172.5,36)より x- 〜 N(172.5,36/9)=N(172.5,4),同様に,
yi 〜 N(168,20.25)より y- 〜 N(168,2.25)である.
これより,集団 A,B の平均身長の差は, ux-y- 〜 N(4.5,6.25)と分布する.
すなわち, 集団 A,B の標本平均の差は,平均 4.5cm,標準偏差 √6.25=2.5cm の正規分布に従う. この正規分布が 0 より大きくなる確率を求めればよい.
 標準正規分布に変換すると,
z = (u − μ)/σ = (0−4.5)/2.5 = -1.8
となるので,標準正規分布が -1.8 以上となる確率である.正規分布の対称性から,
Pr[ z > -1.8 ] = Pr[ z < 1.8 ] = 0.964
である.


Copyright (C) 2008, Hiroshi Omori. 最終更新:2009年 5月28日