2009.6.25
休講中の宿題
学籍番号を送信していない学生が何人かいました.
第21問:上位100番
 内 訳   解答総数  正解学生数 
 人 数   187 73
    
第22問:クラス平均得点の標準誤差
 内 訳   解答総数  正解学生数 
 人 数   129 76
    
第23問:平均点が50点以下の確率
 内 訳   解答総数  正解学生数 
 人 数   200 58
第24問:クラス平均の差の標準偏差
 内 訳   解答総数  正解学生数 
 人 数   109 52
    
第25問:A 組の平均が B 組の平均より 5 点高い確率
 内 訳   解答総数  正解学生数  
 人 数   100 31
    

6.仮説検定

6-1.帰無仮説(H0)と対立仮説(H1

統計的仮説

統計学で扱う仮説とは,母集団に対する断定や推測.たとえば,

などである.

統計的仮説検定で用いられる仮説は,まず,帰無仮説という形式で与えられる.
帰無仮説棄却されることに意味がある仮説である.
帰無仮説と反対の仮説を対立仮説という.

上の3番目の例でみると,

帰無仮説: 母集団 A と母集団 B の平均は等しい. (H0: μA = μB
対立仮説: 母集団 A と母集団 B の平均は等しくない. (H1: μA ≠ μB

母集団 A と母集団 B は異なる処理(薬の投与など)をしているので,実験の目的 は,母集団 A と母集団 B の平均は異なる(処理効果がある)ことを言いたい (対立仮説が正しいことを望む)のだが,まずは 「等しい(処理効果無し)」と仮定してみようという考え方.

6-2.検定

検定統計量

 標本から算出される量で,検定に用いられるもので,t 値,F 値などがある. この値から帰無仮説を受託(採択)するか 棄却(対立仮説の採択)するかを判定する.

有意水準

 統計的仮説検定では,たとえば2つの母集団平均が等しいという帰無仮説を考えると, この帰無仮説のもとで,検定統計量(標本平均の差に基づく t 値など)以上 (もしくは未満)の値が得られる確率を求める.
くだけた言い方をすれば,帰無仮説が正しいとしたときに,標本のようなデータが得られる確率 を求める.
これが十分小さい(ほとんどありえない)ときは,平均が等しいと仮定したことが誤りであったと判断して 帰無仮説を棄却し,2つの母集団平均には差があると結論づける.
この確率がそれほど小さく ない場合は,このような統計量が得られることもありえると考え,帰無仮説を採択し,平均が等しいと考え てもよいとする.
棄却か採択かの判断の基準となる確率を有意水準といい, 5 %1 % がよく用いられる.

例題
通常の飼育方式では,鶏の1ヶ月の成長量が平均 100g,標準偏差 10g であることが知られて いるとする.新方式 A による飼育方法を 25 羽で試したところ,平均成長量が 105g となった.新方式 でも標準偏差は変わらないものとして,新方式 A は通常の飼育方式と成長量が有意に異なるか 検定せよ.ただし,以下の標準正規分布の分位点(パーセント点)を用いよ.

標準正規分布の分位(パーセント)点
 確率   0.95  0.975  0.99  0.995
 分位点   1.64  1.96  2.33  2.58

解答例
新方式による成長量の母集団平均を μ とおき,通常の飼育方式の成長量の 母集団平均を μ0 = 100 とおく.題意より,新方式での成長量の標準 偏差は,通常の飼育方式と等しい σ0 = 10 とみなせる.
この問題での帰無仮説(H0)と対立仮説(H1)は,
H0:μ = μ0
H1:μ ≠ μ0
と定式化される.検定に用いる検定統計量は,標本平均を標準化した z 値の絶対値 である.
標本の大きさ n = 25 の標本の標本 平均 x- = 105より,
|z | = √n | x- − μ0 |/σ0 =5(105−100)/10=2.5
である.新方式の標本平均の標準化値の絶対値 |z | = 2.5 は,両側 5 %点(片側 2.5 %点) の 1.96 よりは 大きく,両側 1 %点(片側 0.5 %点)の 2.58 よりは小さい.
よって,新方式は通常方式と成長量は 5 %水準で有意に異なると言えるが,1 %水準 では有意でない.つまり,5 %有意である.
検定の結論の書き方

片側検定と両側検定

実験状況によっては,薬投与などの処理を行った集団(処理群)平均 μA が,薬を投与しない 集団(対照群)の平均 μB より小さくなることはないことが事前に わかっているような場合が ある.このようなとき,

帰無仮説,H0: μA = μB
対立仮説,H1: μA > μB
となる.これは,事前情報より,μA < μB となる可能性 をまったく考えない場合である.
このため検定には,片側 5 %点や 1 %点を用いる.

例題
通常の飼育方式では,鶏の1ヶ月の成長量が平均 100g,標準偏差 10g であることが知られて いるとする.改良方式 B による飼育方法を25羽で試したところ,平均成長量が 103.5g となった. 改良方式は,通常方式より成長量が減少することがないことが知られている. 改良方式での標準偏差は変わらないものとして,改良方式 B は通常の飼育方式と 成長量が有意に増大したか 検定せよ.ただし,例題4-1の標準正規分布の分位点(パーセント点)を用いよ.
解答例
改良方式による成長量の母集団平均を μ' とおき,通常方式の成長量の 母集団平均を μ0 =100とおく.題意より,改良方式での成長量の標準 偏差は,通常の飼育方式と等しい σ0 = 10 とみなせ,また, 改良方式平均 μ' は通常方式平均 μ0 より 下回ることは想定されない.よって,対立仮説は片側となり, この問題での帰無仮説(H0)と対立仮説(H1)は,
H0:μ' = μ0
H1:μ' > μ0
と定式化される.検定に用いる検定統計量は,標本平均を標準化した z 値 である.
標本の大きさ n = 25 の標本の標本 平均 x- = 103.5より,
z = √n(x- − μ0 )/σ0 = 5(103.5−100)/10 = 1.75
である.片側検定なので,片側パーセント点を用いる. 改良方式の標本平均の標準化値 z = 1.75 は,片側 5 %点の 1.64 よりは 大きく,片側 1 %点の 2.33 よりは小さい.
よって,改良方式は通常方式と成長量は 5 %水準で有意に増大したと言えるが,1 %水準 では有意でない.
両側検定であれば,5 %水準でも有意にならなかったことに注意.つまり,改良方式と通常方式 の間には有意な差はみとめられなかった,という結論になった.片側検定の方が有意な結果 が出やすい.

Copyright (C) 2008, Hiroshi Omori. 最終更新:2009年 6月25日