2010.11.15

10-3. 母平均に対する t 検定

平均 μ,分散 σ2 がともに未知である正規母集団から 大きさ n の標本を抽出したところ, 標本平均が x-,標本分散が s2 であった.
帰無仮説 H0:μ = μ0
対立仮説 H1:μ ≠ μ0
の検定は,帰無仮説のもとで,分散既知のときに標本平均を標準化して えられる z 値, z = √n ( x- − μ0 )/σ の標準偏差のところに 標本標準偏差 s を代入した t 値は,
ttest
のように自由度 n−1 の t 分布に従うことを利用して検定できる.すなわち, この分布の97.5%分位点を t(n - 1)0.975 とすると, 有意水準 5 %の検定は,
|t| > t(n - 1)0.975
のとき帰無仮説を棄却する.|t| が検定統計量で,この値を |t| 値という.
例題
通常の飼育方式では,鶏の1ヶ月の成長量が平均 100gであることが知られて いるとする.新方式 A による飼育方法を 25 羽で試したところ,平均成長量が 105g であり, 標本標準偏差が 10g であった.新方式 A は通常の飼育方式と成長量が有意に異なるか 検定せよ.ただし,自由度 24 の t 分布の 97.5%パーセント点は 2.06 であり, 99.5%点は 2.80 である.
解答例
新方式による成長量の母集団平均を μ とおき,通常の飼育方式の成長量の 母集団平均を μ0 = 100 とおく.
この問題での帰無仮説(H0)と対立仮説(H1)は,
H0:μ = μ0
H1:μ ≠ μ0
と定式化される.検定に用いる検定統計量は,標本平均を標準化した t 値の絶対値 である.
標本の大きさ n = 25 の標本の標本 平均 x- = 105より,
|t | = √n | x- − μ0 |/s =5|105−100|/10=2.5
である.新方式の標本平均の標準化値の絶対値 |t | = 2.5 は,両側 5 %点(片側 2.5 %点) の 2.06 よりは 大きく,両側 1 %点(片側 0.5 %点)の 2.80 よりは小さい.
よって,新方式は通常方式と成長量は 5 %水準で有意に異なると言えるが,1 %水準 では有意でない.つまり,5 %有意である.

10-4. 母平均に対する t 検定(信頼区間との関係)

帰無仮説 H0:μ = 0,に対して有意水準 5 %の検定を行うとする.
例題
過去の経験から分散が 9 であることがわかっている正規母集団から大きさ 16 の標本を抽出 したところ,標本平均が 1.5 であった.母平均が 0 であるという帰無仮説 H0:μ = 0, を検定せよ.
解答
| z | = √n ×| x- | /σ = √16×1.5/3 = 2 > 1.96,
となり,| z | 値が標準正規分布の 97.5%点の 1.96 より大きいので帰無仮説は有意水準 5%で 棄却される

先ほどの例では, 0.03 < μ < 2.97 が母平均 μ の 95% 信頼区間 であった.
母平均 μ の 95%信頼区間が 0 を含んでいないので帰無仮説 H0:μ = 0 は棄却される, と考えてもよい.

例題
正規母集団から大きさ 16 の標本を抽出 したところ,標本平均が 1.5 で標本分散が 9 であった. 母平均が 0 であるという帰無仮説 H0:μ = 0, を検定せよ.
解答
自由度 15 の t 分布の 97.5%点は t 分布表から 2.13 である.
| t | = √n ×| x- |s / = √16×1.5/3 = 2 < 2.13
となり,| t | 値がこの 2.13 より小さいいので帰無仮説は棄却されない

先ほどの例では, -0.1 < μ < 3.10 が母平均 μ の 95% 信頼区間 であった.
母平均 μ の 95%信頼区間が 0 を含んでいるので帰無仮説 H0:μ = 0 は棄却されない, と考えてもよい.

例題
あるダイエット法 A を無作為に選ばれた 6 名が 3ヶ月間試したところ,以下のデータを得た.この方法に効果があるかを検定してみる.
 帰無仮説は,「ダイエット法 A に効果がない.」であり,ダイエット法の使用前から使用後での体重の減少が0より 有意に大きいか,を検定することで効果の判定が行える.すなわち,

ダイエットの効果:減少量平均 = (使用前体重 − 使用後体重)の平均

としたとき,

帰無仮説 H0 : 減少量平均 = 0
対立仮説 H1 : 減少量平均 ≠ 0

と定式化される. 以下の表の空欄を埋めよ.

Copyright (C) 2008, Hiroshi Omori. 最終更新:2010年11月12日