2006.6.8
東京国際大学 統計学の応用(a)
問題集
東京大学大学院農学生命科学研究科 大森宏
数表
標準正規分布累積確率表
z 値 | -2.5 | -2.4 | -2.3 | -2.2 | -2.1 | -2.0 |
-1.9 | -1.8 | -1.7 | -1.6 | -1.5 | -1.4 |
累積確率 | 0.006 | 0.008 | 0.011 | 0.014 | 0.018 |
0.023 | 0.029 | 0.036 | 0.045 |
0.055 | 0.067 | 0.081 |
z 値 | -1.3 | -1.2 | -1.1 | -1.0 | -0.9 | -0.8 |
-0.7 | -0.6 | -0.5 | -0.4 | -0.3 | -0.2 |
累積確率 | 0.097 | 0.115 | 0.136 | 0.159 | 0.184 |
0.212 | 0.242 | 0.274 | 0.309 |
0.345 | 0.382 | 0.421 |
t 分布の分位点(パーセンタイル)
自由度 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 |
97.5%分位点 | 2.57 | 2.45 | 2.36 | 2.31 | 2.26 |
2.23 | 2.20 | 2.18 | 2.16 | 2.14 |
自由度 | 15 | 16 | 17 | 18 | 20 | 30 |
50 | 100 | 500 | N(0,1) |
97.5%分位点 | 2.13 | 2.12 | 2.11 | 2.10 | 2.09 |
2.04 | 2.01 | 1.98 | 1.96 | 1.96 |
5/25:予備テスト
- 問題1
-
標準正規分布では,-3 から 3 までの間に全データのほとんどすべて(99.7%)が含まれる.
平均60,標準偏差4の正規分布に従うデータのほとんどすべてを含む区間はどれか.
- 解答:
-
データのほとんどすべてを含むのは,平均のまわりで,標準偏差の±3倍(±3σ)= 4×3=12.
つまり,60±12=48 から 72.
-
- 問題2
-
平均 70,標準偏差 6 の正規分布に従うデータにおいて,
ちょうど平均であるデータ 70 は標準正規分布では 0 に対応する.
データ79が標準正規分布に対応する点はどれか.
- 解答:
-
データ x=79 の平均μからの偏差=x−μ=79−70=9.これは,標準偏差σの,z=(x−μ)/σ=9/6=1.5倍.
つまり,標準正規分布では z=1.5 に対応する.この操作を標準化という.
5/25:本テスト
- 問題1
-
1000人の学生による英語試験の平均は60点,
標準偏差は12点であった.48点から72点の間には何人くらいの学生がいるか.
- 解答:
-
48点から72点は平均60点±12点で,これは,平均(μ)±標準偏差(σ)の範囲である.
標準正規分布では±1の範囲に全体の68.3%が含まれるので,
1000人ではその68.3%の683人が含まれる.
-
- 問題2
-
1000人の学生による英語試験の平均は60点,標準偏差は12点であった.
上位25番以内に入るには何点が必要か.
- 解答:
-
1000人の上位25番以内は,全体の上位2.5%である.標準正規分布の97.5%分位点は,1.96であるので,
平均より1.96σ=1.96×12=23.52点高ければよい.つまり,60+23.52=83.52点必要.
-
- 問題3
-
平均60,標準偏差5の正規分布Aと平均58,標準偏差3の正規分布Bがある.
Aからの標本とBからの標本の差の平均は2であるが,標準偏差はどれくらいになるか.
- 解答:
-
2つの独立な正規分布の和や差の分布の分散は,もとの正規分布の分散の和になる.
σA=5,σB=3,より,
分散は,σA2=25, σB2=9,であり,
差の分散は,σA-B2=
σA2+σB2=34である.
標準偏差は,σA-B=√34≒5.83,である.
-
- 問題4
-
平均7,標準偏差5の正規分布からの標本が0より大きくなる確率を求めよ.
- 解答:
-
平均 μ=7,標準偏差 σ=5,の正規分布の点 x=0,の標準正規分布に対応する点 z は,
予備テスト問題2より,z=(xーμ)/σ=(0−7)/5=-1.4,である.0 より大きくなる確率,
Pr[x>0],は標準正規分布では -1.4 より大きくなる確率,Pr[z>-1.4],である.
-1.4 より小さくなる確率が表より,Pr[z<-1.4]=0.081,とわかるので,
求める確率は,Pr[x>0]=Pr[z>-1.4]=1−Pr[z<-1.4]=1−0.081=0.919,である.
-
- 問題5
-
平均7,標準偏差5の正規分布からの大きさ16の標本を抽出し,
標本平均を求めた.標本平均の標準偏差はどれくらいの大きさになるか.
- 解答:
-
平均 μ,分散 σ2 の正規分布,N(μ,σ2),
から大きさ n の標本 xi を抽出したとき,
標本平均 x- は平均 μ,分散 σ2/n の正規分布,
N(μ,σ2/n),に従う.
これより,標本平均の標準偏差は,σx-=
σ/√n=5/√16=5/4=1.25,である.
6/1:本テスト
- 問題1
-
10,000人の学生による国語試験の平均は55点,標準偏差は12点あった.73点のAさんの順位はどの位であるか.
- 解答:
-
73点を標準化すると,z=(x−μ)/σ=(73−55)/12=1.5.表より,-1.5以下の確率が0.067なので,
1.5以上になる確率も0.067である.10000×0.067=670.
-
- 問題2
-
平均10,標準偏差20の正規分布からの標本が0より大きくなる確率はどれくらいであるか.近いものを選べ
- 解答:
-
標準化すると,z=(x−μ)/σ=(0−10)/20=-0.5.問題は,標準正規分布で-0.5より大きくなる確率と等しい.表より,
-0.5以下の確率が0.309なので,求める確率は,1−0.309=0.691
-
- 問題3
-
平均10,標準偏差20の正規分布する母集団(ぼしゅうだん)から大きさ25の標本を抽出したとき,
標本平均が0より大きくなる確率はどれくらいであるか.近いものを選べ.
- 解答:
-
大きさnの標本の標本平均の標準偏差はσx=σ/√n=20/√25=4.この分布のもとで標準化すると,
z=(x−μ)/σx=(0−10)/4=-2.5.問題は,
標準正規分布が-2.5以上となる確率.-2.5以下の確率が0.006なので,求める確率は,1−0.006=0.994.
6/8:本テスト
- 問題1
-
分散16の正規分布から大きさ25の標本を抽出したら,標本平均が10であった.母集団平均μの95%信頼区間を求めよ.
標準正規分布の97.5%分位点を1.96とする.
- 解答:
-
分散σ2がわかっているときの,母集団平均μの95%信頼区間は,
x- − 1.96×σ/ √n < μ
< x- + 1.96×σ/ √n
であるので,1.96×σ/√n=1.96×4/√25=1.568.これより,10±1.57,よって,8.43<μ<11.57.
-
- 問題2
-
正規母集団から大きさ20の標本を抽出した.母分散の信頼区間を計算するために必要な分布は何か.
- 解答:
-
正規母集団,N(μ,σ2 )から大きさ n の標本を抽出し,標本分散を s2 とすると,
(n−1)s2 /σ2 は自由度 n−1 のχ2 分布に従う.これより,
n=20 で,母分散σ2 の推論を行うときは,自由度 19 のχ2 分布を用いればよい.
6/15:予備テスト
- 問題1
-
正規母集団から大きさ16の標本を抽出したら,標本平均が5で,標本標準偏差が3であった.
母集団平均μの95%信頼区間を求めよ.
- 解答:
-
分散σ2が未知のときの,母集団平均μの95%信頼区間は,大きさnの標本の
標本平均をx-,標本標準偏差をsとすると,
t = √n( x- − μ )/s は自由度n−1のt分布
に従う.自由度15のt分布の97.5パーセント点が,2.13であるので,信頼区間は,
x- − 2.13×s/ √n < μ
< x- + 2.13×s/ √n
である.2.13×s/ √n=2.13×3/√16=1.60.よって,5±1.60.
よって,3.40<μ<6.60
-
- 問題2
-
標準偏差が3の正規分布から大きさ16の標本を抽出したら,標本平均が5であった.
母集団平均μの95%信頼区間を求めよ.
- 解答:
-
分散σ2がわかっているときの,母集団平均μの95%信頼区間は,
x- − 1.96×σ/ √n < μ
< x- + 1.96×σ/ √n
であるので,1.96×σ/√n=1.96×3/√16=1.47.これより,5±1.47,よって,3.53<μ<6.47.
-
- 問題3
-
正規母集団から大きさ16の標本を抽出した.標本分散は5であった.母分散の95%信頼区間は何か.
- 解答:
-
自由度15のχ2 分布の2.5%,97.5%点がそれぞれ,6.26と27.49であるので,分散
σ2 の95%信頼区間は,
6.26 <
(n − 1)s2 /σ2
< 27.49
つまり,
(n − 1)s2
/6.26 >
σ2
> (n − 1)s2
/27.49
である.これより,15×5/27.49< σ2 <15×5/6.26,
2.73< σ2 <11.98,である.
6/22:予備テスト
- 問題1
-
分散が4の正規分布から大きさ9の標本を抽出したら,標本平均が5であった.母集団平均μの95%信頼区間は何か.
- 解答:
-
分散σ2がわかっているときの,母集団平均μの95%信頼区間は,
x- − 1.96×σ/ √n < μ
< x- + 1.96×σ/ √n
であるので,1.96×σ/√n=1.96×2/√9=1.31.これより,5±1.31,よって,3.69<μ<6.31.
-
- 問題2
-
正規母集団から大きさ9の標本を抽出したら,標本平均が5で,標本分散が4であった.
母集団平均μの95%信頼区間を求めよ.
- 解答:
-
分散σ2が未知のときの,母集団平均μの95%信頼区間は,大きさnの標本の
標本平均をx-,標本標準偏差をsとすると,
t = √n( x- − μ )/s は自由度n−1のt分布
に従う.自由度8のt分布の97.5パーセント点が,2.31であるので,信頼区間は,
x- − 2.31×s/ √n < μ
< x- + 2.31×s/ √n
である.2.31×s/ √n=2.31×2/√9=1.54.よって,5±1.54.
よって,3.46<μ<6.54
-
- 問題3
-
平均2.5,分散25の正規分布からの標本が0より大きくなる確率はどれくらいであるか.
- 解答:
-
x=0を標準化すると,z=(x−μ)/σ=(0−2.5)/5=-0.5.
標本xが0より
大きくなる確率は,標準正規分布で-0.5より大きくなる確率.
標準正規分布表より,0.5より小さい確率が0.309なので,0.5より大きい確率は,0.691,約70%である.
-
- 問題4
-
平均 2.5,分散 25 の正規分布する母集団(ぼしゅうだん)から大きさ 16 の標本を抽出したとき,
標本平均が 0 より大きくなる確率はどれくらいであるか.
- 解答:
-
標本平均x-を標準化すると,
z=√n( x- − μ )/σ=√16(0−2.5)/5=-2.
これより,標本平均x-が 0 より大きくなる確率は,z が -2 より大きくなる
確率である.標準正規分布表より,z が -2 より小さくなる確率が0.023なので,
求める確率は,0.977.約97.5%である.
6/28:予備テスト
- 問題1
-
標準偏差が 3 の正規分布から大きさ 16 の標本を抽出したら,標本平均が 8.4 であった.
母集団平均 μ の 99%信頼区間は何か.
- 解答:
-
分散σ2がわかっているときの,母集団平均μの99%信頼区間は,標準正規分布の99.5%
分位点2.58を用いて,
x- − 2.58×σ/ √n < μ
< x- + 2.58×σ/ √n
である.2.58×σ/√n=2.58×3/√16=1.94.これより,8.4±1.94,よって,6.46<μ<10.34.
-
- 問題2
-
問題1の状況で,帰無仮説 H0 :μ=10,対立仮説 H1 :μ≠10を行った.結果はどれか.
- 解答:
-
標本平均 x- を標準化した z の絶対値は,
|z|=√n| x- − μ |/σ=√16×|8.4−10|/3=4×1.6/3=2.13
である.この値は,標準正規分布の97.5%点(両側5%)の1.96よりは大きく,99.5%点(両側 1 %)の
2.58よりは小さい.つまり,5 %有意であるが,1 %有意でない.帰無仮説は有意水準 5 %で棄却される.
-
- 問題3
-
問題1の状況で,帰無仮説 H0 :μ=10,片側対立仮説 H1 :μ<10を行った.結果はどれか.
- 解答:
-
片側検定なので,標準正規分布の 95%点の 1.64 と 99%点の 2.33 を用いる.z の2.13は,1.64 よりは大きく,
2.33よりは小さい.つまり,5 %有意であるが,1 %有意でない.帰無仮説は有意水準 5 %で棄却される.
7/13:予備テスト
- 問題1
-
標準偏差が 2 の正規分布から大きさ 9 の標本を抽出したら,標本平均が 7 であった.母集団平均 μ の 95%信頼区間は何か.
- 解答:
-
分散 σ2 がわかっているときの,母集団平均 μ の 95%信頼区間は,
x- − 1.96×σ/ √n < μ
< x- + 1.96×σ/ √n
であるので,1.96×σ/√n=1.96×2/√9=1.31.これより,7±1.31,よって,5.69<μ<8.31.
-
- 問題2
-
正規母集団から大きさ 9 の標本を抽出したら,標本平均が 7 で,標本標準偏差が 2 であった.
母集団平均 μ の 95%信頼区間を求めよ.
- 解答:
-
分散 σ2 が未知のときの,母集団平均 μ の 95%信頼区間は,大きさ n の標本の
標本平均を x-,標本標準偏差を s とすると,
t = √n( x- − μ )/s は自由度 n−1 の t 分布
に従う.自由度 8 の t 分布の 97.5パーセント点が,2.31 であるので,信頼区間は,
x- − 2.31×s/ √n < μ
< x- + 2.31×s/ √n
である.2.31×s/ √n=2.31×2/√9=1.54.よって,7±1.54.
よって,5.46<μ<8.54
-
- 問題3
-
集団 A と集団 B の母平均 μA と μB の違いをみるため,大きさ 10 の標本をそれぞれ抽出した.
集団 A では標本平均が 100,標本標準偏差が 3 であり,集団 B では標本平均が 106,標本標準偏差が 4 であった.
集団 A,B とも共通の分散をもつとすると,共通の標準偏差の推定値はどれか.
- 解答:
- 共通の分散の推定値 s2 は,標本の大きさがともに等しいときに(は,
s2=(sA2+
sB2)/2
=(32+42)/2=25/2,
よって,s=√(25/2)=5/√2=3.54
-
- 問題4
- 問題3の状況で,帰無仮説 H0 :μA=μB,
対立仮説 H1 :μA≠μB を行った.結果はどうか.
- 解答:
-
帰無仮説のもとでは,標本平均の差 x-A−x-B は,
x-A−x-B 〜 N(0,2σ2/n)
と分布する.これより平均の差x-A−x-Bを標準化して,標準偏差σを
標本標準偏差 s で置き換えた t 値は,帰無仮説のもとで,自由度 18 の t 分布に従う.
検定統計量は t 値の絶対値 |t| で,
|t|=√(n/2)|x-A−x-B|/s=
√5|100−106|/3.54=3.79,
である.この値は自由度 18 の t 分布の 99.5%点(両側1%)の 2.88 より大きいので,1 %有意である.
帰無仮説は有意水準 1 %で棄却され,集団 A と集団 B の平均は有意に異なると言える.
Copyright (C) 2006, Hiroshi Omori. 最終更新:2006年 7月14日