2011.11.28

10-5. 2 つの母集団平均に対する t 検定(サンプルサイズが等しいとき)

2つの母集団 A,B があり,それぞれが平均を μA,μB, 分散を σA2,σB2 の正規分布に従って いるが,その値は未知であるとする.いま,両集団の分散の値が等しく, σA2=σB2=σ2,と仮定 できるとしよう.このとき,

帰無仮説,H0: μA = μB
対立仮説,H1: μA ≠ μB

の検定は t 分布を用いて行える.

母集団 A と B からそれぞれ大きさ n の標本を抽出した. 母集団 A からの標本の標本平均が x-A, 標本分散が sA2 であり,母集団 B の 標本平均が x-B, 標本分散が sB2 であった.母集団 A,B が共通の 分散 σ2 をもつとすると,その推定値 s2 は 以下のように推定できる.

母集団 A からの標本の偏差平方和:  SA=(n - 1)sA2
母集団 B からの標本の偏差平方和:  SB=(n - 1)sB2
母集団 A,B 全体での偏差平方和:  SSASB =(n - 1)sA2+ (n - 1)sB2
母集団 A,B 共通の標本分散: bunsan

また,母集団Aの標本分布は,N(μA,σ2)であり,母集団Bでは, N(μB,σ2)であることから,それぞれの標本平均は,
x-A 〜 N(μA,σ2/n), x-B 〜 N(μB,σ2/n)
と分布する.これより,標本平均の差x-Ax-Bは,
diffmean
と分布する.

帰無仮説(H0: μA = μB)のもとでは,μA−μB=0,なので, 標本平均の差は,

diffmean
と分布する.これを標準化した z 値,
diffz
において,標準偏差 σ の代わりに標本標準偏差 s を代入した t 値,
difft
が自由度 n + n - 2 = 2n - 2 の t 分布に従うことを利用して検定ができる.
例題
 あるダイエット食品の効果を調べるため,ダイエット食品の摂取群10名と通常食事群10名に 被験者をランダムに分けて,3ヶ月間実験を行った.3ヶ月での体重減少量は, ダイエット食摂取群(D群)で平均2.3kg,標準偏差2.0kgであり,通常食事群(N群)で平均0.5kg, 標準偏差1.2kgであった.ダイエット食品には効果が認められるかの検定を上の表の数値を用いて行う.
 D群とN群では,標準偏差にそれほど違いがあるとは思われなかったので, D群とN群は共通の標準偏差σを持つと仮定した.
解答例
ダイエット食摂取群(D群)の体重減少量の母集団平均を μD とおき, 通常食事群(N群)の体重減少量の 母集団平均を μN とおく.
この問題での帰無仮説(H0)と対立仮説(H1)は,
H0: μD = μN
H1:μD ≠ μN
と定式化される.以下の表を埋めて解答する.

10-6. 2 つの母集団平均に対する t 検定(サンプルサイズが異なる場合)

2つの母集団 A,B があり,それぞれが平均を μA,μB, 分散を σA2,σB2 の正規分布に従って いるが,その値は未知であるとする.いま,両集団の分散の値が等しく, σA2=σB2=σ2,と仮定 できるとしよう.このとき,

帰無仮説,H0: μA = μB
対立仮説,H1: μA ≠ μB

の検定を前節と同様に行う.

 母集団 A から大きさ nA,母集団 B から大きさ nB の標本を抽出した. 母集団 A からの標本の標本平均が x-A, 標本分散が sA2 であり,母集団 B の 標本平均が x-B, 標本分散が sB2 であった.母集団 A,B が共通の 分散 σ2 をもつとすると,その推定値 s2 は 以下のように推定できる.

母集団 A からの標本の偏差平方和:  SA=(nA−1)sA2
母集団 B からの標本の偏差平方和:  SB=(nB−1)sB2
母集団 A,B 全体での偏差平方和:  SSASB =(nA−1)sA2+ (nB−1)sB2
母集団 A,B 共通の標本分散: bunsan

また,母集団Aの標本分布は,N(μA,σ2)であり,母集団Bでは, N(μB,σ2)であることから,それぞれの標本平均は,
x-A 〜 N(μA,σ2/nA), x-B 〜 N(μB,σ2/nB
と分布する.これより,標本平均の差x-Ax-Bは,
diffmean
と分布する.

帰無仮説(H0: μA = μB)のもとでは,μA−μB=0,なので, 標本平均の差は,

diffmean
と分布する.これを標準化した z 値,
diffz
において,標準偏差 σ の代わりに標本標準偏差 s を代入した t 値,
difft
が自由度 nA+nB−2 の t 分布に従うことを利用して検定ができる.
 なお,母集団A,Bで分散の同等性が疑われるときは,ウェルチの検定を用いるが,本稿では取り扱わない.
例題
通常の飼育方式と新方式 A による飼育方法で,鶏の1ヶ月の成長量に差があるか 調べたい.通常の飼育方式で20羽を飼育したところ,平均成長量が100g,標本標準偏差 が9gであった.また,新方式 A による飼育方法を 25 羽で行ったところ,平均成長量が 105g であり, 標本標準偏差が 11g であった.新方式 A は通常の飼育方式と成長量が有意に異なるか 両集団の分散は等しいと仮定して検定せよ. ただし,自由度 43 の t 分布の 97.5%パーセント点は 2.02 であり, 99.5%点は 2.70 である.
解答例
新方式による成長量の母集団平均を μA とおき,通常の飼育方式の成長量の 母集団平均を μB とおく.
この問題での帰無仮説(H0)と対立仮説(H1)は,
H0: μA = μB
H1:μA ≠ μB
と定式化される.以下の表を埋めて解答する.

Copyright (C) 2008, Hiroshi Omori. 最終更新:2011年11月19日