分子系統樹の作成2

東京大学大学院農学生命科学研究科 大森宏

http://lbm.ab.a.u-tokyo.ac.jp/~omori/phylogeny/txt/phylo2.html
2014年11月 4日

0.DNA データの取得と系統樹作成のビデオ

当研究室卒業生林氏のご尽力により,系統樹作成のビデオが YouTube にアップロード されています.参考にどうぞ.

http://jp.youtube.com/watch?v=vfNFkn5cuIM

動画画面右下の▲にマウスを載せると表示されるうちの下側のボタン(キャプ ション機能をオンにする)をクリックすると字幕の説明が表示されます. そのままだと画質が粗いですが、同じく右下の「高画質で表示する」をクリック すると、オリジナルと同等の高画質動画で再生されます.

課題1. 系統樹による EDN と ECP の関係の考察

 RNA 分解酵素(リボヌクレアーゼ (RNase))ファミリーでのうち EDN (eosinophil-derived neurotoxin) の配列をサルで取得し,系統樹を作成した.一方,RNA 分解酵素ファミリーには ECP (eosinophil cationic protein) もある.EDN は取り上げた 6 種のサルすべてにあるが、 ECPはシシザルには無く 5 種のサルにある.
 ECP は EDN からの遺伝子重複により形成されたと考えられている. そうすると,遺伝子重複後 EDN から ECP に変化した遺伝子系統は配列が大きく変化したと考えられるので、進化 距離が大きくなっていることが予想される.これを確かめるには,EDN と ECP を混ぜて系統樹をつくればよい.

  1. 系統樹の作成手法を UPGMA,NJ,最尤法の中から1つ選び.EDN と ECP を混ぜて系統樹を作成せよ. EDN と ECP とにどのような関係があるか,系統樹を見て論ぜよ.ただし,「遺伝子重複」と「進化距離」の2文字 は必ず使用すること.
  2. サル以外の系統に EDN や ECP があるか調べよ.たとえば,ハツカネズミ(Mus musculus)などの ハツカネズミ属(Mus Genus)や Rattus(Old World rats, クマネズミ属),イヌ(Canis lupus familiaris),ヤマネコ(Felis silvestris),イノシシ(Sus scrofa)などで調べる.類似配列検索の Blast を使う手もある. 見つかった場合にはそれらを混ぜて系統樹を作成 し,考察を加えよ.なお,このように 2 種の遺伝子の関係をみるときは,UPGMAによる系統樹が見やすい.

課題2. ブートストラップ法による分岐の信頼性の評価

 分子系統樹を作成したときに,その分岐パターンがどの程度信頼性があるか調べる統計的手法. いま,系統樹を n サイトで構成したとき,この n サイトから繰り返しを許して n サイトをリサンプル して系統樹を作成する.リサンプルされた系統樹で同一の分岐パターンが得られればその分岐パターン はそれだけ信頼性がおけることになる.
 サル族の EDN と ECP の系統樹にブートストラップ法を適用し,分岐の信頼性を調べる.

 参考(当研究室卒業生林氏作成ビデオ) http://www.youtube.com/watch?v=-YXjOFQ0dds

  1. ブートストラップ配列データの生成:`seqboot' を起動. phylip 形式の配列データセットから、サイトのリサンプリングにより、100の配列データセット を生成する.
  2. UPGMA, NJ 系統樹:`dnadist' を起動.100の配列データセットそれぞれに対して、距離行列を生成する. オプションは `M',データセット数は,`100',適当な奇数の値を入れる. データかウエイトは,`D',データセット数は,`100' を入力する.できあがった距離行列セットファイルを 適当な名前に変え、`neghibor' の入力データとする.オプションは `M',
  3. 最尤法系統樹:`dnaml' を起動.100の配列データセットそれぞれに対して、最尤法による系統樹を生成する. オプションは `M', データかウエイトは,`D',データセット数は,`100',適当な奇数の値を入れ,jumble には 1 を指定する.
  4. 最頻出枝の出現回数: `consense' を起動. 先ほどの `neghibor' か `dnaml' で得られた tree ファイルを入力すると,枝ごとのブートストラップ 回数が出力される.
  5. 最初の配列データセットから得られたUPGMA, NJ 系統樹もしくは最尤系統樹の分岐のところに,[ ] をつけ,その中にブートストラップ確率を記入し, NJtree で見る.

Copyright (C) 2004, Hiroshi Omori. 最終更新:2010年11月 9日