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4-2. 浮遊性・付着性 |
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珪藻を水中での存在様式で分けると、プランクトン性つまり浮遊性の種と、付着性の種がいます。 |
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プランクトン性の珪藻は鞭毛などによって積極的に浮遊しているわけではないので、水を汲んでガラス管の中に静置すると、やがてすべて沈澱してしまいます。海や湖など野外の水塊には水自身の対流、川の水の流入、海流、水上を吹く風などによって絶えずわずかな水の動きが生じています。これによってプランクトン性種は浮遊することができるのですが、珪藻自身が沈みにくい形をしているものも少なくありません。 |
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プランクトン性の種類には群体を作るものや、長い珪酸質の剛毛(setae)を持っている種類も多く、それによって沈降速度を抑えています。ツノケイソウ属(Chaetoceros)などは細胞本体より長い針を持っています。
また、ステファノディスクス属(Stephanodiscus)では、殻の周縁部にぐるりと並んだ有基突起から粘液性の糸を出し、それによって沈降するのを抑えるのです。
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珪藻の増殖速度は種によってさまざまです。大型の付着性種では遅いものでは2週間で1回しか分裂しないようなものもあります。しかし、浮遊性種は一般的に増殖速度が速いものが多いようです。これは珪藻自身が鞭毛などの運動器官を持たず、静置しておけばすべて光合成のできない暗い水深へ沈んでしまう運命を持っていることと関係があります。実際は水の中の流れのために、上方へ巻上がってくるものもあり、全部が全部下方へと沈んでいくわけではありません。そこで、もし増殖速度が高ければ、暗い水中へと沈む細胞数以上の細胞を新しく得ることができます。つまり、沈む以上に細胞数が増えれば、生存戦略上は全く問題はないわけです。1日に2回分裂をする種が知られています。また、培養では1日に3回分裂させた例もあるようです。
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付着性の種も、基質に強く付着するものから、堆積物中を滑走運動で這い回るものまで、基質との関係は様々です。河川でも急流のあたる石表面には、コッコネイス・プラケンツーラ変種リネアータ(Cocconeis placentula var. lineata)のように強固に付着する種類が見られ、流れの緩い部分には、大型の中心類珪藻であるプレウロシラ属(Pleurosira)やヒドロセラ属(Hydrosera)の群体のように、何かにからみついたり、ただ底に堆積しているだけのような、付着性とはいいがたい種類までみられます。さらに羽状類縦溝珪藻は堆積物の中や上を動きます。
付着性の種類にも単細胞性から群体性のものがあります。河川にアクリル板などを沈めてみると、始めはコメツブケイソウ属(Cocconeis)のように扁平に張り付く単細胞性の種類しかいませんが、時間の経過とともにハリケイソウ属(Synedra)の叢状群体やクサビケイソウ属(Gomphonema)の樹状群体がみられるようになり、あたかも陸上における裸地から森林への遷移に類似するような現象が観察できます。
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