ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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採集と観察
8-1. 採集の方法

8-1-1. 身近な採集場所


(1)水槽

 採集場所は水のあるところなら、海でも川でも良いのですが、身近な場所では庭の池や金魚の水槽などが手軽です。水槽を長く放置すると、ガラス面に水垢やコケとよばれるヌルヌルしたものが付着してきます。よく見ると緑や青、赤まで様々な色を呈していますが、これは藻類の色素によるものです。この中で特に、茶色く見えるものが珪藻です。


水槽のガラス面に付着する珪藻

 ガラス面に付着した珪藻を脱脂綿やティッシュペーパーでこすり、お皿にとって水気をしぼります。しばらくして底に沈澱した物をスポイトでとり、顕微鏡で確認して下さい。黄色い楕円形や長方形の幾何学的な外形で、色素体が黄色く、時にゆっくり動く生物が珪藻です。水槽では通常、付着性の羽状類珪藻が採れます。


普通の観察法では殻の模様は見えない


(2)庭や学校の池

 小さな池では、適当な石や水生植物の茎を葉ブラシでこすったり、底の堆積物を直接スポイトで吸いとります。それぞれの付着物ごとに珪藻の出現種を比べてみることも、おもしろいと思います。 章末に東京学芸大学の珪藻をご紹介しています。



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8-1-2. 河川での採集

  河川は農・工業や上水道の水源として、また漁業やレクリエーションの場として、人間との関わりが深い自然です。河川の礫には付着性の珪藻群集が発達しています。群集内の種類組成は、採集場所の物理環境や水質の違いによって様々に異なります。都市近郊の川は水質汚濁の影響が大きいので、珪藻を調べて水質判定を行うことは、人間活動の自然への影響を知る良い機会になるのではないでしょうか。

  珪藻がたくさん付着している石は、表面が黄褐色〜褐色をしています(写真1)。直径が20cmくらいの石を選びましょう。川辺からでも石は採れますが、長靴を用意すると川の中にも入れるので便利です(写真2)。
 


  石を採ったら歯ブラシで表面を強くこすります(写真3)。こうして付着している珪藻を掻き落とすのです。ときどきスポイトで川の水をかけてやり、掻き採った珪藻を洗い流してやりましょう。採集試料は瓶などに入れ、持ち帰ります。

一年を通して、珪藻はどの季節にも生育していますが、冬場から3月頃までは付着量が多くなります。これは冬季は雨量が少なく川の流れが安定し、石などの付着基物から剥離することが少なくなるのと、緑藻や藍藻と比べ珪藻は低温を好む種類が多いためです。

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8-1-3. 湖沼や海


 湖沼や海では浮遊性珪藻が採集できます。無色透明に見える水でも、汲み取って静置沈澱し、遠心分離を繰り返し濃縮すると、様々な生物が見つかります。しかしこのために持ち帰らなくてはいけない水は、湖沼では富栄養化の程度によって100ml〜10リットル、一般的には1リットル程度になりますから、たいへんな荷物です。

  個人で浮遊性珪藻を調べる場合は、プランクトンネットで濾過採集することになります。これならば100ml程度の容器ですみます。プランクトンネットは、ストッキングなどで工作する方法が考えられていますので、気軽に試してみてはいかがでしょうか。
(参考:http://imasy.or.jp/~saexa/Lab/index.htm
 たくさん採集できるように、ネットは数回曳いて下さい。


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8-1-4. 保存


 採集した試料は、生で見る必要がなければ、腐敗防止のためにホルマリンを少し加えて固定します(終濃度3〜5%)。安全のためホルマリンを使いたくない場合は、試料2に対し90%エタノールを1の割合で加えます。なおスチロール瓶は使用を避けて下さい。

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