ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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増殖と生活環
3-1. 無性生殖

単細胞生物である珪藻は細胞分裂によって生じる細胞1つ1つが個体であり、細胞分裂によって増えること自体が生殖です。しかしその増殖(=無性生殖)は、殻がある故に次第に小さくなってしまうという特殊な性質のものです。 珪藻は有性生殖によって、増大胞子を生じ殻の大きさを回復します。 この章では無性生殖と有性生殖、生活のある時期に休眠する現象、培養を扱っています。
*生活環に関係する用語は【コラム】をご参照ください。

3-1-1. 英語名「diatom」は細胞分裂を表している


 珪藻の生活環のほとんどは、2分裂による増殖の期間です。この分裂様式は後述するように他の藻類にはみられない大変特徴的なものです。珪藻のことを英語でdiatomと呼びますが、これはcut into twoもしくはcut through twoに相当するギリシャ語が語源です。ドイツ語で珪藻はKiesel algen(「珪素の藻」の意味)で、殻の成分に基づいた命名ですが、英語名はまさに分裂の特性に基づいた命名と言えましょう。

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3-1-2. 分裂により小さくなる娘殻


 珪藻の被殻は、しばしば弁当箱の「蓋」と「身」にたとえられます(蓋は上半被殻、身は下半被殻に相当します)。核分裂後、細胞質が分裂し、その後分裂面に向かい合って新しい娘殻が形成されるので、2つの娘殻は、親被殻の「蓋」と「身」に対しては、どちらも新しい「身」になります。これは、新しい殻が常に親の被殻の内部で形成され、親の被殻よりサイズの大きい「蓋」を作ることが不可能なためです。このため、細胞分裂で作られる新しい殻は、常に「いれこ」細工のようになり、細胞分裂を行うたびに、そのサイズはどんどん小さくなっていきます。

珪藻の細胞分裂方法
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ユーノチア・フォルミカ(Eunotia formica)で筆者が計測したところ、分裂するたびに被殻は長さが1μmずつ減少しました。こうして無性的な2分裂を何回と無く繰り返すと、ついには被殻の長さが最初のものと比べ1/2〜1/4にまで減少してしまうのです。さて、その後も珪藻は分裂を繰り返したなら、細胞はどんどん小さくなって、最後には無くなってしまう!・・・・・・そこで珪藻は有性生殖を行い、増大胞子を形成してサイズを回復するのです。


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3-1-3. 殻を成長させずに細胞体積を増やす方法


 珪藻細胞では分裂に先立ち、プロトプラストの体積が増大します。硬い珪酸質でできた被殻は、一度作られると「蓋」や「身」自体が伸長することはありませんが、「蓋」と「身」を上下方向にスライドさせることは可能です。これによりプロトプラストの体積増大が可能となるのです。

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