ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
ビデオビジュアルナレッジSimRiver珪藻百科SimDiversity使い方

分類と系統
6-1. 珪藻の種と属

6-1-1. 珪藻は何種いる?


 珪藻は今日水圏で、最も多様に種が分化し、生物量的にも繁栄している藻類です。珪藻では珪酸質でできた被殻の形と模様によって、長年の間分類がおこなわれてきました。他の多くの単細胞藻類と比べると珪藻被殻の形態はたいへん明瞭なので、珪藻類全体の種数を数え上げることなど、一見易しそうにみえるかもしれません。しかし、実際は明瞭であるがゆえに、わずかに形態が異なる被殻間では、それらを同種としてとらえるか、異種としてとらえるか判断が難しい場合も多く、珪藻全体の種数を数え上げることは容易なことではありません。その数は時代とともに増加する傾向にあり、1万2千種(Hendey,1964)とも、2万種(Werner,1977)とも、10万種(Round & Crawford,1989)とも推定されています。これは、時代と共により詳細な植物相の調査が現生種や化石種でなされ新種が記載されたこと、また、走査型電子顕微鏡の発達により、従来は同種と考えられていたものが、微細構造に基づき別種とされる場合が増えたことばかりでなく、珪藻の「種の概念」のとらえかたの違いによっても、その数が大幅に変動しています(Mann,1999)。

ページトップへ
6-1-2. 増え続ける属数


 属の数は年々増加しています。1800年頃には記載された珪藻の属は数属しかなかったものが,1900年頃には約500属となり、現在ではその数は1000を越えています(Fourtanier & Kociolek,1999)。1990年代でも約70属が新属として記載されており,数の増加はとどまることを知らないように思えます。近年新設されている属には、フナガタケイソウ属Naviculaやツメケイソウ属Achnanthes、クチビルケイソウ属Cymbellaといった古くに記載された大きな属を細分化したものも多く、広義のフナガタケイソウ属は、現在では30近い属に細分化されるようになりました。こういった属は走査型電子顕微鏡観察による被殻形態の特徴のみによって設立されているものが多く、葉緑体の数や形、ピレノイド、有性生殖の仕方など細胞に関する情報が記載されている属は、必ずしも多くないのが現状です。このような属に対する正当性の評価は必ずしも研究者間で一致していなませんが、今後、被殻以外の細胞や分子系統からの情報によって、それぞれの属の範囲が定まっていくものと期待されます。

ページトップへ

最初の画面へ全コンテンツ一覧Copyright