ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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珪藻研究の歴史
7-6. 増大胞子形成の研究

7-6-1. 増大胞子の発見


 増大胞子はイギリスのスワイゼス(G.H.K.Thwaithes)が1847年に報告したハフケイソウ属の1種(Epithemia turgida)で報告したものが最初のもののようです。19世紀初頭まで、珪藻は「植物か」それとも「動物か」という論議がなされていました(最初に記載された珪藻は、動物学の雑誌に掲載されました)。これは、珪藻には動くものがいること、緑色をしていないことによるものと思われます。彼はこの論文で「珪藻が植物か動物か」という論議に対し、珪藻の接合とチリ藻や接合藻の接合の類似性がその疑問を解く手がかりとなると述べています。19世紀半ばになると、珪藻を動物として扱う研究者はいなくなりましたが、これには彼の研究が大きく貢献しているように思われます。

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7-6-2. 増大胞子の研究者


  今日まで増大胞子が観察されている種類は100種程度で、これは珪藻全体の種数から見ると1%にも満たない数です。したがって、増大胞子を観察した研究者も多くはいません。

 その中で、19世紀末に活躍したドイツのカールステン(G.Karsten)の観察スケッチは目を見張るものがあります。彼は10数種の増大胞子を観察していますが、現代人には真似のできそうもない詳細な絵を描いています。

  20世紀ではオーストリアのガイトラー(L.Geitler)が増大胞子の第一人者でしょう。彼は91歳の誕生日の直前に他界しましたが88歳までに359編の論文を著しました。その中で彼が報告を行った増大胞子形成は50種類にものぼります。彼の観察は詳細を極め、よくぞ光学顕微鏡でここまで観察できたと思うほどの精密な観察報告を著しています。ガイトラーは藍藻の分類体系を築いた研究者としても有名ですが、それは若い頃の研究で、珪藻研究は60歳を過ぎてから本格的にやったものです。

 ガイトラーと、ほぼ同年代に活躍した研究者にドイツのフォン・ストッシュ(von Stosch)がいます。それまで、中心珪藻の有性生殖は良く知られていなかったのですが、彼は中心珪藻が卵生殖をすることや、羽状珪藻無縦溝類のラブドネマ・アドリアーティクム(Rhabdonema adriaticum)が卵と不動胞子による生殖をおこなっていることを明らかにしました。

 1980年代以降では、イギリスのマン(D.G.Mann)や、ウクライナのロッシン(A.M.Roschin)、シェプルーノフ(A.M.Chepurnov)が、それぞれ詳細な観察を行っています。ウクライナでの研究は、ソ連時代には西側諸国には知られていなかったものが多く、近年ようやく日の目を見た研究です。彼らの研究は、近親交雑の影響や同株、異株性についてまで調べており、遺伝的にも大変興味深いものがあります。

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