ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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細胞の構造
1-5. 貯蔵物質

1-5-1. 貯蔵多糖と油


光合成により生産された糖は、その後クリソラミナランもしくは油(脂質)として貯蔵されます。クリソラミナランはβ-1,3グルカンを主体とする多糖で、昔はロイコシンと呼ばれていました。

 油は細胞内で表面張力のため丸くなって油滴として存在します。この油滴はしばしば細胞内の決まった位置に存在します。たとえば、フネケイソウ属(Navicula)のタイプであるナヴィクラ・トリプンクタータ(Navicula tripunctata)の種小名のラテン語の意味は「3つの点」ですが、これはおそらく生の細胞において見える2個の油滴とその間に見える核を3つの点として観察したことに由来するものと思われます。

 イチモンジケイソウ属(Eunotia)の珪藻を強光下で培養すると、たくさんの油滴が生産されますが、この場合の位置は特に定まっていません。この油は水より軽いため、顕微鏡下で被殻を壊すと水面に油滴が浮き上がってくるのが観察されます。





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1-5-2. 不飽和脂肪酸


 油の成分はさまざまなものより成ります。種によって、またその生育環境によって組成は異なりますが、代表的な不飽和脂肪酸はC14(炭素を含む鎖長が14という意味)のミリスチン酸、C16のパルミチン酸やパルミトレイン酸、C18のオレイン酸、C20のEPA(イコサペンタエン酸)でしょう。C18のリノール酸やリノレン酸は多く含まず、またC22>のDHA(ドコサヘキサエン酸)を含む種はほんのわずかのようです。



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1-5-3. EPAに注目!


 珪藻は不飽和脂肪酸でC20のEPAが豊富なのが特徴です。EPAはヒトの体内で合成できない必須脂肪酸で、外部から食品として取り込まれるとリン脂質となって細胞膜に組み込まれ、アラキドン酸カスケードの基質となって生態調節機能を担います。また、血小板凝集能や白血球誘引能を緩和する作用があることがわかっており、血栓性の疾患、動脈硬化、リュウマチなどの成人病に効果があるといわれています。

 現在、EPAはイワシ油から精製されているようですが、海産珪藻のフェオダクチルム・トリコルヌーツム(Phaeodactylum tricornutum)の珪藻油には、それを上回るパーセンテージのEPAが含まれています。


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