ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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増殖と生活環
3-2. 有性生殖

3-2-1. 増大胞子形成



イチモンジケイソウ属の増大胞子
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分裂によりサイズが元の大きさの1/2〜1/4まで減少した珪藻は、減数分裂を行い配偶子を形成します。そして、その後有性生殖をする事によって再び大きさを回復するのです。この過程では接合子が2倍〜4倍くらい大きくなりますが、この増大する接合子が増大胞子(auxospore)です。接合後、増大を始めたものを便宜上「若い増大胞子(young auxospore)」と呼び、増大が終わった完成品のみを「増大胞子(auxospore)」と呼ぶ場合もあります。

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3-2-2. 有性生殖の様式


 中心類珪藻と羽状類珪藻とでは有性生殖が異なります。前者は卵と精子による卵生殖ですが、後者では鞭毛を持った精子は形成されず、珪酸被殻を持たない裸の同型配偶子がアメーバ的に移動し接合するのです。

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3-2-3. 中心類珪藻の有性生殖


 中心類珪藻の配偶子形成では、卵を作る細胞と、精子を作る細胞とでは大きさが異なる場合が知られています。この場合卵を作る細胞の方が大きいものとなります。

タルケイソウ属の生活環
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1個の細胞内に卵は1つですが、精子は多数作られます。その数は種類によって異り、4個作られるもの、8個作られるもの、多いものでは32個形成されるものもあります。また、精子内に葉緑体が含まれるものもあれば、精子内には全く含まれないものもあります。いずれにせよ精子はそれらが形成された被殻の外へと泳ぎだし、卵母細胞の被殻の隙間から内部に侵入し受精を行います。

 その後、増大胞子の鱗片の下で、それを内張りするように初生殻が形成され、1個の初生細胞が作られます。ついで初生細胞中央部に細胞分裂によって普通見られる殻、すなわち栄養殻(vegetative valve)が形成されるのです。

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3-2-4. 羽状珪藻の有性生殖


 羽状珪藻の縦溝類では、まず最初に2つの細胞が接近し被殻を接触させます。

 次に被殻の中で配偶子が形成されます。無縦溝類では隣合った細胞同士が配偶子を形成します。配偶子は被殻の中で1あるいは2個作られますが、これは種によって数が決まっています。ただし、2個作る種類でも、条件により1個しか作らない場合も知られています。


ヒシガタケイソウ属の生活環
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配偶子は上半被殻と下半被殻のあいだに作られた隙間をアメーバ運動により通り抜け、もう一方の被殻内でつくられた配偶子と接合を行います。接合の方式には、両被殻内からでてきた配偶子が中間部で接合するもの、両被殻間に接合管を作りその中で接合するもの、一方の被殻内で作られた配偶子が他方の被殻内に入ってそこで接合するものがあります。

  配偶子は接合後伸長しソーセージ形の増大胞子を形成します。ユーノチア・マルチプラスティディカ(Eunotia multiplastidica)は、接合管が形成され、その中で配偶子が接合し増大胞子が1つ作られるものです。増大胞子の表面は、多数の薄い珪酸質のバンド(横走環帯と縦走帯)が組合わさってできペリゾニウム(perizonium)で被われます。無縦溝珪藻のラブドネマ・アークアーツム(Rabdonema arcuatum)ではさらにその上に中心類珪藻にみられるような珪酸質の鱗片があることがフォンストッシュによって報告されています。

 初生殻はペリゾニウムの内側に形成されますが、ペリゾニウムに接して作られるため形は細長いドーム形です。その後、初生細胞の中央部に通常の分裂により、普通の殻(栄養細胞)が作られます。

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