ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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珪藻群集と環境
5-3. 指標生物としての珪藻

5-3-1. 環境要因と珪藻群集


 海には海産珪藻、湖沼や河川には淡水産珪藻というように、場所が変わればそこに生活する珪藻群集も変化します。これはそれぞれの環境に適した種類が出現するためで、このことを逆に利用すると、珪藻群集の調査結果から生育環境をある程度推定することができます。特定の環境要因との結びつきが明らかな生物を指標生物と呼びますが、珪藻は色々な水域に見られ種の特徴もはっきりしているので、指標生物としてよく利用されます。 珪藻の環境に対する特性は、20世紀に入ってから、特に水質の諸要因に対して調べられてきています。

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5-3-2. 塩分


 塩分に対する特性は1927年コルベ(R.W.Kolbe)によってハロビオンシステムとして研究が始められました。これは水の塩分濃度によりそこに出現する珪藻をグルーピングしたもので、彼はそれを大きく真塩性(30,000-40,000mg/リットルの海水に出現)、中塩性(500-30,000mg/リットルの汽水に出現)、貧塩性(500mg/リットル以下の淡水に出現)の3つに分け、さらに貧塩性を好塩性嫌塩性不定性に細分化しました。

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5-3-3. pH


 水素イオン濃度に対する特性は測定が簡単なことから比較的昔から行われてきました。近代珪藻学の大御所フステット(F.Hustedt)はドイツ・オーストリアのスンダ列島陸水探検隊の採集品を調査し、1939年にpHに対する珪藻の性質を真アルカリ性(pH7以上の水域に生育)、好アルカリ性(pHほぼ7の水域に生育するが、多くは7以上の水域に出現)、不定性(pH7付近の水域に出現)、好酸性(pHほぼ7の水域に出現するが、多くは7以下の水域に出現)、真酸性(pH7以下の水域に生育し、最適出現水域は5.5以下である)の5つに分けました。

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5-3-4. 溶存酸素


 チョルノキー(B.J.Cholnoky)は1968年の著書『陸水における珪藻の生態学』の中で、溶存酸素に対する珪藻種のグルーピングや、窒素従属栄養種の考えなどを示しています。

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5-3-5. 水質汚濁


 産業革命後のヨーロッパでは、河川の汚濁が次第に進み、都市部では手の施しようもないような川があちこちに出現するようになってきました。この汚れた川の生物の体系化を最初に試みたのが1908年のコルクビッツとマーソン(Kolkwitz & Marsson)の研究です。彼らは川の清冽な水域からひどく汚濁された水域まで、そこに住む生物を調べ、貧腐水性β−中腐水性α−中腐水性強腐水性という4つの汚濁階級をわけることに成功しました。彼らの後、さまざまな生物において、汚濁との関係がより詳しく調べられるようになりましたが、中でも珪藻は水中の底生動物とともに研究が盛んに行われてきた生物です。

 しかし、長い間、強腐水域には珪藻はササノハケイソウ属のニッチア・パレア(Nitzschia palea)くらいしかいないと言われていたのです。著者は1980年代前半に珪藻の対汚濁特性を研究したところ、日本の河川の場合、強腐水域で積極的に生きることのできる種類が10種類もいることがわかったのです。しかもその内の1種類は、今まで誰によっても記載されたことが無い種類で、新変種、アクナンテス・ミヌティッシマ変種サプロフィラAchnanthes minutissima var. saprophilaとして報告しました。この種類は今では日本だけでなく、ヨーロッパの汚濁域にも普通に見られることがわかっています。


<※写真:撮影必要>
強腐水域に出現するアクナンテス・ミヌティッシマ変種サプロフィラ(Achnanthes minutissima var. saprophila)

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5-3-6. 生物学的水質判定


 生物学的水質判定法は、物理化学的測定と異なり、その生物が生きていた期間の水の平均的な水質を得ることができます。指標生物の出現に基づいて、あてはまる汚濁階級を判定するという作業は、直感的でわかりやすいため、環境教育的な側面からも利点があります。指標としての利便性や精度を向上させるために、汚濁階級を数値化表現する方法や、指標生物を特定の分類群に絞り込む方法などが、種々考案されました。
以下に珪藻を用いた水質判定方法のメリットを示しましょう。


珪藻を用いる方法 魚や底生動物を用いる方法

(a) 試料採集のために直径15cmほどの石が一つあればよいので(石がなくても可)、採集が楽であり経費も安い。
(b) 水質の変化によって珪藻は他水域に移動しないので、その地点の平均的水質をたやすく求めることができる。
(c) 汚濁の程度、季節の変化に関わらず何らかの種類が生育しているので、必ず調査できる。
(d) クリーニングした殻を保存すればよいため、半永久的に必要に応じいつでも再分析できる。また、試料は小瓶に入るので、保存場所をとらない。
(a) 魚の場合、広範囲で採集しなくてはならない。底生動物の場合でも直径15cmというわけにはいかない。
(b) 魚の場合、水質が変化すると他水域へ泳いで逃げてしまうことがある。
(c) 魚の場合、汚濁の程度や季節によっては、生息しないために調査できない場合がある。
(d) 固定液中に液浸保存しなくてはならない。魚の場合は大きな標本瓶が必要であり、保存のため広いスペースがいる。

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