ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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分類と系統
6-5. 生物界における珪藻

6-5-1. 珪藻の仲間


 すべての生物には、太古の海にめばえた生命の祖先から、進化をしてきた道筋(系統)があります。珪藻はどのような生物と近縁なのでしょうか。
 珪藻が所属する黄色植物門(または不等毛植物門)は、多数の微細藻類の綱とコンブやワカメなど大形の褐藻綱からなる一大系統群です。この内、黄金色藻綱シヌラ類は珪酸質の構造体を細胞の外側に持つことから、特に珪藻と関係が深いように思われています。またパルマ目という綱としての位置づけが不明な分類群は、珪酸質のプレートに覆われていて、このプレートが中心類珪藻であるメロシラ属(Melosira)の増大胞子の鱗片に類似することから、珪藻綱との近縁性が示唆されています。

*藻類の分類体系は【コラム】をご参照下さい。

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6-5-2. 二次共生による葉緑体の獲得


 植物の細胞内小器官である葉緑体は、無色の真核生物に、光合成能をもつ藍藻のような原核生物が取り込まれて生じたものと考えられています。黄色植物の葉緑体はこの一次共生生物を取り込んだ二次共生によって獲得したものと考えられるようになりました。二次共生の証拠はいくつかあります。葉緑体に4枚の包膜をもつこと(2枚は葉緑体膜で、外側の2枚の膜は葉緑体を包む膜で葉緑体ERという)と、葉緑体ERと葉緑体膜のあいだにペリプラスチダルコンパートメントと呼ばれる空間をもつことなどです。

 このような二次共生は藻類の他の系統でも知られ、細胞の微細構造と分子系統解析による葉緑体の遺伝子系統と真核生物の核の遺伝子系統の比較から、藻類の多様性の原動力となっていることが明らかになってきています。


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6-5-3. ストラメノパイル


 藻類の葉緑体が、細胞共生によって獲得されたものである以上、藻類の系統の認識は細胞本体の性質に基づいてなされるべきであることは明らかとなりました。褐藻類や黄金色藻類など黄色植物に分類される仲間には、鞭毛表面に管状マスチゴネマとよばれる小毛が特徴的に見られますが、管状マスチゴネマは鞭毛菌類や一部の原生動物にも存在していました。分子系統解析の結果、これらの生物は大きな1つの系統群を形成していることがわかりました。従来の植物・菌類・動物という枠を超えるこの系統群は、ストラメノパイルとして認識されつつあります。

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