ミクロの生物「珪藻」から川の環境を見つめてみよう
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分類と系統
6-4. 進化の証拠

6-4-1. 化石の証拠


 珪藻の殻は珪酸質のため化石になりやすい。これは珪藻の進化を探る上で他の生物には真似ることのできない大きなメリットです。珪藻の最も古い化石は中生代の白亜紀からで、中心珪藻が出現しています。羽状珪藻はそれより新しく新生代からで、無縦溝類、双縦溝類、単縦溝類、原始縦溝類の順に出現しています。

地質年代と化石証拠に基づく珪藻の歴史
地質年代はHarland et al.による「A Geologic Time Scale 1869」に、出現珪藻についてはJouse(1978)、Simonsen(1979)、柳沢ら(1989)に 従った。


地質年代と化石証拠に基づく珪藻の歴史

 地球46億年の歴史で、生命が誕生したのはおよそ30億年前の先カンブリア時代と考えられています。真核生物は15億年前に誕生し、古生代のオルドビス紀には陸上植物が出現し、珪藻が出現した頃には、被子植物やほ乳類まですでに出現いたといわれます。珪藻は体制が単純にも関わらず、これら高度に組織や器官が発達した生物よりも遅れて出現しているのです。


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6-4-2. 微細構造の証拠


 化石から出現した順序はわかりますが、お互いの系統関係はどうなっているのでしょうか。また中心類と羽状類はどのような点で、類縁関係がみられるのでしょうか。

 多くの中心珪藻に見ることができ、羽状珪藻の無縦溝類と原始縦溝類にも見られる共通の構造に唇状突起があります。つまり唇状突起を持つ中心珪藻と羽状珪藻の種類は、共通の祖先より分化したと考えられます。

 次に、ハスレー(G. R. Hasle)は唇状突起と縦溝の殻の内側末端の形態的類似から、縦溝は唇状突起が進化してできた物だと考えました。さらに、メデゥリン(L. K. Medlin)らとピケットヒープスらが、中心珪藻は唇状突起からわずかの粘質多糖類を分泌し、非常にゆっくりでありが回転運動や横揺れ運動をすることを報告し、機能的にも唇状突起と縦溝は類似していることがわかりました。これらのことから、羽状珪藻の双縦溝類と単縦溝類も、中心珪藻と同じ系統から進化して出現したことが裏付けられました。


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6-4-3. 殻の個体発生による証拠


 縦溝類内の系統は、伝統的に原始縦溝類(短い縦溝をもつ)から単縦溝類(片方の殻のみ縦溝をもつ)が進化し、そして双縦溝類(両方の殻に縦溝をもつ)が進化したと考えられていました。しかし化石的証拠では、これらはまったく逆の順番で出現しています。さて、いったいどちらが本当の進化なのでしょうか。

 ピケットヒープスと私たちはそれぞれ別個にツメケイソウ属(Achnanthes)の種類の殻形成を観察し、縦溝を持たない殻も殻形成中では縦溝があるのに、最後の段階で珪酸質の沈着によって埋もれてしまうことを発見した(2-2-8. 殻形態形成と系統進化参照)。つまり化石の出現どおり、単縦溝類は双縦溝類から、二次的に進化したということが裏付けられました。

 原始縦溝類は縦溝が短いうえ、唇状突起が存在する。恐らく原始縦溝類は双縦溝類や単縦溝類のとは別の系統で、中心類あるいは無縦溝類珪藻から派生してきたのではないかと考えています。またこれが化石的証拠とも一致する考え方だと思います。


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